こんにちは!「山田さんちの日常」BGM作曲担当の海湖歩(umikobo)と申します。 長らく続いてきました「山田さんちの日常」もいよいよ最終回を迎えるにあたって、せっかくなので音楽の面からいろいろと振り返ってみようと思い、つらつらと文章を書いてみました。小説でいうところのあとがきみたいなものです。お時間ががございましたら、是非ご一読いただければ幸いかと存じます。


――参加の経緯について

 当時、私はアニメやゲームといった既存のBGMアレンジや着信メロディー製作を中心に活動しており、自作曲をあまり作ることはなかったのですが、共同で何かを創作するということをしてみたかったということもあり、しばらく某企画スタッフ募集サイトを巡っておりましたところ、歌ものを募集している企画は割とあったのですが、BGMはそれほどなく、あったとしても近頃の世相を反映してか、悲しいとか切ないとか割と暗〜い感じ、ネガティブな作品が多かったので、あまりやってみたいというのがなかったのですが、そんな中ひときわゆるそうな(?)感じのタイトル『山田さんちの日常。』というのが目に入りました。
 早速、募集要項やディザーサイトを拝見し、「これや!こういうのがやりたかったんや!」とすぐさま応募したのを記憶しております。過去作品をサンプルとして送ればよかったのですが、もうその時には例のメインテーマはだいたい完成しており、それも一緒に送りました。2010年5月下旬のことです。
 数日後、無事採用ということになり、こういった企画自体参加することが初めてだったので、期待交じりに若干の不安とプレッシャーも感じたことを記憶しております。ちなみに最初のオーダーはこんな感じでした。

・メインテーマとはまた違った、日常的なBGM
(こちらは“まったり”、“ゆる〜い”といった感じです)
・迫りくる感じのBGM
(効果音でいえば、ゴゴゴゴ…といったイメージです)
・予告用のBGM
(予告は毎話毎に30秒〜1分前後、長くても2分くらいになります)
・ギャグっぽいBGM
(ちょっとした言い合い、ギャグがいくつか入るシーンで使います)
・シュラバっぽいBGM

 当初一部、素材サイトからお借りしたものを使うというというご提案もいただきましたが、せっかくなので、できればすべてこの『山田さんちの日常。』に作られたオリジナルなものにしたい思いで「全部作らせてください!」という旨を企画様に伝えたことはあります。結果的に、なかなか出来上がらない曲もありご迷惑をおかけすることもあった点、申し訳なく思います。



――『山田さんちの日常』の音楽について

 まず、曲を作るに当たって、全体的なサウンドの統一というものが念頭にありまして、使う楽器の種類はある程度きめておくこと、メインのモチーフをいろいろアレンジを変えながら随所に用いることで、よりメインテーマを浸透させ作品の音楽の統一を図るということを考えていました。『山田さんちの日常。』は、ほのぼのとした感じが前面に押し出されていたので、オーケストラや吹奏楽で使うような楽器・編成というよりも、小さめ編成で学校にあるような楽器(ピアノやギター、ハーモニカ、リコーダー、鉄琴、オルガン、そして特に活躍した木琴、他)を中心に、そして、楽曲自体もシンプルでいこうということは頭にありました。



――記念ドラマ『もしも山田さんちが童話だったら』の音楽について

 通常、一般的なアニメ作品と同様、上のようなオーダーを受けたものを作っていって、編集の方が出来た曲のなかからBGMをのっけていく方式になっています。
 この企画の台本をいただいたとき、いつもの山田とは毛色の違う感じを受けました。、一度はやってみたかったセリフに合わせて音楽をのせていく方式でいけないかと、お願いいたしましたところ、快くOKいただきましたので、この番外編に関しましてはセリフの録音がすべて終わった後に、曲を書いて、録音しています。(もちろん事前にこんな感じでっていうラフみたいなものは送ってあります。)ですので、曲調や尺、テンポはセリフの進行に合わせています。
 『もしも山田さんちが童話だったら』では、シンデレラや人魚姫といった有名な童話をモチーフに物語が展開されていくということで、音楽のほうも、いつもより西洋な感じを出すべく、得意のオーケストラの楽器中心で曲を構成したわけですが、かといってあくまでも「山田さんち」なので、大編成のフルオーケストラでドーン!といくわけではなく、弦楽器を中心とする小編成(2フルート、2クラリネット、2オーボエ、1ファゴット、3ホルン、1ピアノ、1ハープ、1鉄琴、打楽器、8ヴァイオリン、5ビオラ、2チェロ、2コントラバス、いつもの山田さんちの音楽よりは大編成!)で構成してあります。また、楽曲自体も本編の『山田さんちの日常。』にリンクするべく、通常のドラマで流れるBGMのアレンジしたものが主体となっています。



――おわりに

 当初はこんなに長く続く企画だとは思っていなく、軽い気持ちで参加したんですが、振り返ってみれば遠いところまできたものです。昨今では、ネットの普及や以前にもましてPCで録音、編集が手軽にできるようになったこともあって、数多くのボイスドラマ企画が生まれています。その一方で、残念ながら企画進行半ばで休止になるものも多くあります。そんな中、最後までここまで長く続けてこられたのも企画者様、スタッフ様の熱意、そして、聴取いただいている皆様あってのことです。藤崎絵留様、日向和音様、ならびに他スタッフの皆様、そして、『山田さんちの日常。』を応援していただいてるすべての皆様に感謝申し上げます。
 冒頭で申しあげたとおり『山田さんちの日常。』これにて一旦おしまいということですが、完全に企画が終了したということではないそうですので、いつの日かまたお会いできることを楽しみにしております。個人的には企画HPのストーリーページ冒頭にある偽あらすじ文(?)『山田さんちの"非"日常。』を聞いてみたい気もします。もちろんその時はフルオーケストラでドーン!!とド派手に鳴らします(笑)。



 さて、たわいもない長文に最後までお付きいただきありがとうございました!それでは次回、番外編『山田さんちの日常。〜山田さんち史上最大の危機!!ミラクル宇宙大戦争〜』でお会いいたしましょう!!(笑)。



2013年12月某日
海湖歩(umikobo)